第5話「家族になったイエロープレート」イエロープレート・ストーリーズ ~エンジェルナンバーがくれた恋~

YELLOWLOVE05-02 イエロープレート恋物語

※本作はフィクションです。登場する人物やエピソードはすべて作者の妄想によるもので、実在のものとは関係ありません。

第5話「家族になったイエロープレート」

それから数年が経った。

慎也と美帆の家は、郊外の静かな住宅地にあった。

朝の光が差し込むダイニングテーブルでは、今日もにぎやかな声が響いている。

「ねえママ、今日のおでかけどこに行くの?」

大きな目を輝かせる娘の紗季。弟の大地は、食パンを両手でわしづかみにして口いっぱいにほおばっている。

美帆が「ちゃんとゆっくり食べなきゃダメよ」と注意すると、大地はニヤリと笑いながら「だって早く車に乗りたいもん!」と言う。

慎也は、コーヒーカップ片手にその様子を眺めていて、思わず吹き出す。

「パパとママのクルマ、今日も並んで走るの?」

「もちろんさ!」

慎也は大地の頭をくしゃっと撫で、「今日は家族で少し遠くの公園までドライブだぞ」と宣言する。

2台の黄色い軽自動車は、今や近所でもちょっとした有名な“夫婦車”だ。

慎也のN-BOXのナンバーは「1122」、美帆の車は「8888」。

両方ともエンジェルナンバーで、「いい夫婦」「幸せ」「無限大のラッキー」と言われている。

出発の朝、子どもたちは元気いっぱいに「いってきまーす!」と玄関を飛び出す。

慎也と美帆は顔を見合わせて笑う。「うちの子たち、ほんとにクルマ好きだね」

「そりゃパパもママもクルマ命だからね」

「今日はどっちがパパ号に乗るのかな?」

「じゃんけんしよう!」

2人は小さな拳を握り、じゃんけんポン!負けた紗季はしぶしぶ美帆の車に乗り込み、勝った大地は大はしゃぎで慎也の助手席に飛び乗る。

それぞれの車でトランシーバーを使って会話したり、窓越しに手を振ったり。

ドライブの道中、子どもたちは自分の家のナンバーがどれだけ“すごいか”をお互いに自慢しあう。

「パパのクルマは『いい夫婦』だもんね。パパとママ、仲良しの証!」

「ママのは『8888』、いっぱい幸せになる魔法の番号なんだよ!」

「いいなー、ぼくも大きくなったら黄色い車で『7777』がいい!」

「紗季はハートのシールを貼りたい!」

信号待ちで車を並べると、子どもたちがガラス越しに変顔をして笑わせ合う。

慎也と美帆は、お互いの車越しにアイコンタクト。「今が一番幸せだな」と自然と思える瞬間だった。

目的地の公園に着くと、広い芝生にレジャーシートを広げてお弁当を食べる。

紗季が四葉のクローバーを探し始め、大地は虫取り網を持って走り回る。

慎也は、何気なく美帆の横に座り「最初はこんな家族になるなんて想像してなかったよな」と笑う。

「でも、やっぱり車のナンバーが運命を運んできてくれたのかも」

「エンジェルナンバーのご利益だね」

「ほんとに。あの時、美帆さんが隣に車を停めてなかったら……」

「もう、その話何度も聞いたよ」

美帆は照れくさそうに笑い、慎也の手を握る。

午後になると、急に空が曇りだし、ぽつぽつと雨が降ってきた。

子どもたちは「わー!急げ!」と声を上げて車に駆け戻る。

4人でひしめき合いながら車内に避難し、窓の外を見ながらしばらく雨宿り。

大地が「パパ、ママって喧嘩しないの?」と突然聞く。

美帆は少し考えてから、「もちろん喧嘩もするよ。でもすぐ仲直りするの」と答える。

慎也が、「どんなに喧嘩しても、エンジェルナンバーが幸せにしてくれるからな」と言うと、

紗季は目を輝かせて「じゃあ大人になっても家族ずっと一緒?」

「うん、ずっと一緒」

美帆は微笑んで答えた。

夕方、雨が止んだ後の帰り道。虹がかかっていて、子どもたちが大興奮で窓に顔を寄せている。

「パパの車のナンバーにも虹のご利益ある?」

「もちろん!みんなに幸せがやってくるナンバーなんだぞ」

家に戻ると、家族全員でカレーを作り、お風呂に入り、リビングで映画を観る。

夜、布団に入る前、紗季がぽつりとつぶやく。

「パパとママみたいな夫婦になりたいな」

大地は「ぼくはパパみたいにかっこいい運転手になる!」

慎也と美帆はその言葉に思わず目を合わせ、そっと笑った。

こうして家族の1日は終わる。

喧嘩も失敗も、笑いも涙も、すべてが“家族の思い出”に変わっていく。

黄色いナンバープレートは、いつしか家族の絆そのものになっていた。

エンジェルナンバーがくれた奇跡は、いまや4人の宝物だ。

これからも、幸せの数字を乗せて、家族のドライブは続いていく。

――そして今日もまた、家族の笑い声がイエロープレートに乗って、街を駆け抜ける。

おしまい。

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